なかなか治らない大人ニキビの原因と治し方♡婦人科独自の解決法♡
大人ニキビとは?
「大人ニキビ」とは、おもに20歳を過ぎてから出るニキビ(吹き出物)のことを指します。
頬やあご、口の周りなどのいわゆる「Uゾーン」に多発し、再発を繰り返すのが大きな特徴です。
さまざまな要因が複雑に重なって発症する大人ニキビは、治りにくく、重症化するケースも少なくありません。
そもそもニキビは、正式には「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」という慢性の皮膚疾患です。
過剰に分泌された皮脂が古い角質とともに毛穴に詰まり、皮膚の常在菌である「アクネ菌」が増殖することで炎症を起こします。
通常、皮脂の分泌が盛んな10代に多く発症することから、「青春のシンボル」などと言われていますが、最近は、思春期を過ぎた20~30代になってニキビに悩まされる女性が増えています。
大人ニキビは、額や鼻などの皮脂分泌が多い場所(いわゆるTゾーン)に出る思春期ニキビとは異なり、頬やあご、口周りなどのフェイスラインに多く発症し、悪化すると首やデコルテ(胸元全体)、背中などの体の広範囲に及ぶ場合もあります。
一旦、症状が改善しても、同じ部位に再発するケースが多いことから、炎症を繰り返すうちに、皮膚の表面に色素沈着やでこぼことした瘢痕(はんこん:ニキビ痕)が残ってしまう場合もあります。
さらに、大人ニキビは、生理周期との関係も深いことから、女性は、生理前に症状が悪化するのも大きな特徴です。
大人ニキビの原因は?
ニキビの発症にはさまざまな要因がありますが、おもに「男性ホルモン(アンドロゲン)」の活性化による影響が大きいと考えられています。
アンドロゲンの一つに「テストステロン」というホルモンがありますが、このテストステロンが「DHT(ジヒドロテストステロン)」という物質に変換されると皮脂の分泌が促進され、過剰な皮脂が毛穴に詰まり、ニキビを悪化させることが分かっています。特に女性は、生理前の黄体期に男性ホルモンの活性が優位になりやすいことから、この時期にニキビの症状も悪化します。
思春期のニキビの原因が、成長に伴う一時的なホルモンの乱れであるのに対し、大人ニキビの場合、なぜ男性ホルモンが優位になるのか、はっきりとした原因は解明されていません。
しかし、働く女性に発症するケースが多いことから、女性の社会進出が進み、男性と同じように社会で活躍するようになったことで、自然と男性ホルモンが優位になるのではないかと推測されます。
そのほか、仕事や人間関係のストレス、食生活の乱れ、睡眠不足など、忙しい現代女性の陥りやすいライフスタイルもホルモンのバランスを崩す要因になるほか、毎日のメイクや過剰なスキンケアが炎症をさらに悪化させてしまう場合もあります。
このように成人女性のニキビは、さまざまな要因が複雑に混ざり合って発症していることが多いため、症状が悪化して長引きやすい傾向があります。
大人ニキビの治し方(ホルモン療法)
通常のニキビ治療では、抗菌薬の服用や塗布などを行うのが一般的ですが、大人ニキビの治療には、男性ホルモン(アンドロゲン)の活性に着目した「ホルモン療法」が効果的です。
ホルモン療法の目的は、アンドロゲンの活性を抑えることであり、治療は「成人女性の大人ニキビの方」が対象となります。治療には以下の2種類の薬剤を使用します。
(※現時点では、どちらの薬剤も保険の適用にはなっていないため、自費治療となりますのでご注意ください。)
ピル
ピルは、卵胞ホルモン(エストロゲン)と、黄体ホルモン(プロゲステロン)という2種類の女性ホルモンを配合した薬です。一日一回、毎日同じ時間に一錠服用していただきます。
ピルには卵巣内でのアンドロゲンの産生を抑え、血液中のテストステロンの量を減らす作用があることから、皮脂の分泌を抑制し、ニキビの発生を根本から抑える効果が期待できます。
スピロノラクトン
スピロノラクトンは、利尿効果があり、古くから高血圧の治療に使われている薬ですが、テストステロンやDHT(ジヒドロテストステロン)が「アンドロゲンレセプター(アンドロゲンが結合する場所)」に結合するのをブロックする作用があることから、「抗アンドロゲン薬」としても知られています。服用すると、アンドロゲンの活性を抑制し、ピルと同様にニキビの発生を根本から抑える効果が期待できます。服用に関しては個人差があるため、症状や経過を見ながら使用する薬の量を調節する必要があります。
ホルモン療法は、従来の治療では効果が得られなかった重症のニキビや、胸や背中など広範囲に出るニキビ、月経不順を伴うニキビなどにも効果が期待できます。
さらに、男性ホルモンは多毛症の原因にもなることから、ニキビと同時に多毛の症状にもお悩みの方は、ホルモン療法を行うと徐々に体毛が薄くなるケースもあります。
ピルやスピロノラクトンは、それぞれ単体で使うこともできますが、二つの薬剤を併用することで効果をより高めることが期待できます。
ピルを3ヶ月程度服用しても十分な効果が得られないような場合にも、スピロノラクトンを併用することでより治療の効果を高めることが可能です。
ホルモン療法の副作用と禁忌
ピルもスピロノラクトンも安全に使用できる薬剤ですが、人によっては、以下のような副作用が現れる場合があります。服用開始後、何か気になる症状が現れた場合には、早めに医師にご連絡ください。
なお、ピル、スピロノラクトンの二剤とも、妊娠中や授乳中の方、今現在、妊娠を希望されている方に処方することはできません。そのほか、特定の病気や条件に当てはまるような場合(薬の種類によって異なります)も、薬の使用ができない、もしくは慎重に使用しなければならないケースがあります。服用に関しては、必ず医師の指示に従い、何かご不安がある時はご相談ください。
ピルの主な副作用
服用開始初期に、患者様によっては、吐き気や不正出血、頭痛などが起こることがありますが、ほとんどが一時的なもので、薬に慣れてくると多くの症状は軽減します。
ピルの服用に関して注意が必要なのは、「血栓症(血液が固まり、血管を詰まらせてしまう)」のリスクが上がることです。発症頻度はそれほど高くありませんが、万一、ピル服用後に、ふくらはぎや手に痛みやしびれが起きたり、強い頭痛や突発的な息切れが起きたりする時には、血栓症の前兆である可能性もありますので、すぐに医師に連絡をしてください。
スピロノラクトンの主な副作用
高血圧の薬であるスピロノラクトンを女性が服用した場合、不正出血や生理不順が起きることがあります。そのような場合には、ピルを併用することで、生理周期を整えることが可能ですが、使用する薬の量が多く、無月経になってしまうような場合には、3ヶ月程度を目安に中用量ピルの服用をするなど、強制的に生理を起こす場合もあります。
よくある質問
Q:通常のニキビ治療とホルモン療法の違いは何ですか?
通常のニキビ治療(抗菌薬の服用や塗り薬、ビタミン剤や漢方薬の服用など)の目的は、ニキビを悪化させるアクネ菌の増殖を抑え、できてしまったニキビの炎症を抑えることです。
それに対してホルモン療法は、男性ホルモンの分泌をコントロールして皮脂腺の活動を抑制し、ニキビそのものを根本的にできにくくすることが目的であるという点が大きく異なります。
Q:ホルモン療法で使用する薬剤は薬局で買えますか?
ホルモン療法で使用するピルやスピロノラクトンは、薬局やドラッグストアなどで販売されているニキビ薬とは異なり、医師の処方がないと使用することができません。そのため、ホルモン療法を希望される場合には、ニキビのホルモン療法を実施している医療機関の受診が必要になります。ホルモン療法を行うにあたって必要な検査はありますか?
服用を開始する前には、問診・視診を行い、症状の程度や月経周期などを確認するほか、血液検査でホルモン状態のチェックを行います。なお治療中は、薬の内服による代謝異常の有無を確認するため、定期的に血液検査を行っていただく必要があります。
Q:血圧の薬であるスピロノラクトンを飲んで、血圧が変化することはありますか?
血圧が正常の方の場合、スピロノラクトンを服用しても血圧値が急激に変化するようなことはありません。また、利尿作用があるとはいえ、尿の量が大幅に増えることもありませんのでご安心ください。
Q:大人ニキビの改善のため、日常生活で気を付けることはありますか?
目立つニキビは、気になってつい触ってしまいがちですが、手で触ったところから細菌が入り、炎症が悪化することがあるので、極力、触らないように気を付けましょう。(特に、自分でニキビを潰すとニキビ痕が残ってしまうことがあるので、絶対にやめましょう。)
また、成人女性のニキビは、肌の乾燥が症状の悪化につながることもあります。
ニキビの原因になりにくい「ノンコメドジェニック処方」の低刺激な保湿剤を使うなどして、しっかり保湿することも忘れないようにしましょう。
そのほか、しっかり睡眠をとる、栄養バランスの良い食事をとる、ストレスをためないなど、基本的な生活を見直すことも大切です。
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